
はじめに
「青年会議所の最大の運動は『ひとづくり』である。」私はこう思います。ここでいう「ひとづくり」とは、人格形成を意味します。「ひとづくり」をするうえで欠かせないコト、それは、「挑戦」と「失敗」です。「挑戦」とは、自分なりにどうすればよくなるのかを考え、行動することです。そして、「失敗」とは、その結果に過ぎません。
ある日、私はコンビニで昼食を買い、店から出た瞬間にたばこのポイ捨てを目撃しました。その際少し距離があることを言い訳にして、何の行動も起こさないまま放置しました。明らかに行動を起こさなければいけない場面で行動をすることができなかったのです。そして、私は行動できなかったことを後悔しました。どのように行動すればよかったのでしょうか。正解はないと思います。人として成長するためには、「挑戦」と「失敗」を繰り返すしかありません。目が覚めたらスーパーマンのようなすごい人間になっていることはありません。人を育てる場合も同様です。毎日の小さな「挑戦」と「失敗」の繰り返しが自分を育て、そして、人を育てるのです。
自ら学習する組織の実現
自ら学習する組織に欠かせないモノ、それは「個人の成長」です。そして、個人の成長に欠かせないモノ、それは「目的と意味」です。我々、東かがわ青年会議所は創立より38年間、メンバーによる自主的な組織運営がなされてきました。時代の流れとともに組織の在り方についても、従来の「トップダウン型」から「理念共感型」へと大きく変化しました。しかし、東かがわ青年会議所においては、従来のやり方が依然として残ったままになっています。今一度これからの時代にあった組織へと変化するために、私たち青年会議所が行うすべての活動に対して、本質を学び、疑問を抱き、「変化させるモノ」と「変化させてはならないモノ」を見分け、変えていかなければなりません。綱領の中にこのような言葉があります。「英知と勇気と情熱」これは、以下のアメリカのニーバーの祈りの一部から採用されたものです。
英知:「変えていくものと残すもの、その2 つを見分ける英知を我に与えたまえ」
勇気:「変えるべきものを変える、チャレンジする勇気を我に与えたまえ」
情熱:「変えてはならないものを受け入れる、心の冷静さを我に与えたまえ」
私たちは、この「英知と勇気と情熱」をもって明るい豊かな社会を築き上げなければなりません。そのためには個人として、JAYCEE としての成長が欠かせないのです。今こそ、東かがわ青年会議所としての「目的と意味」に共感し、自ら学習する組織を実現していかなければなりません。
地域で子どもを育てるまちに
近年、少子化が進み、地域で子どもの声が聞こえなくなったとよく言われます。私たち大人と地域の子どもとの距離が遠くなりつつあるのです。2021年より公益社団法人日本青年会議所は、子どもを産み育てやすい社会の実現のために「ベビーファースト運動」を推進しております。この運動の基本的な考え方は、「地域で子どもを育てる」ということです。地域で子どもを育てるとは、子どもの周囲環境を地域住民が見守るということです。そのために必要なことは、地域の子どもの成長に関心を向けることです。私には2 歳と1 歳の娘がいます。寝返りができたこと。つかまり立ちができたこと。ハイハイができたこと。歩けたこと。子どもの成長を日々感じることは幸せなものです。では、子どもの成長とは、なんでしょうか?それは「挑戦と失敗を繰り返す姿」です。子どもたちが「挑戦と失敗を繰り返す姿」を皆で観て、子どもの成長を肌で感じ、時には共に挑戦し、地域の子どもを地域で育てていく文化を築いていかなければなりません。そのために、地域の中で大人たちと子どもたちが共に「挑戦と失敗をできる機会」を通してつながりを創り出す必要があります。
課題を発見し、解を見出す力を育む
新型コロナウイルス感染症の影響で社会は大きく変化しました。そして、今私たちが生きている時代は「Volatility(変動性)」「Uncertainly(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4つの頭文字をとって、VUCA の時代と呼ばれ、これまでの常識が非常識となる時代となりました。いつの時代においても、人間の土台となる「非認知能力」は重要です。「非認知能力」とは、やり抜く力や根気強さなどといった数値化できない抽象的な概念を指します。この非認知能力を高めることで、認知能力を高めることができるが、その逆はないということがジェームズ・ヘックマン教授の研究で明らかにされています。「非認知能力」と合わせて、これからの時代には、以下の3つの能力が求められます。
課題発見力:ありたい姿と現状とを分析し、課題を発見する力
コミュニケーション能力:自分の考えを他者に整理し、わかりやすく伝える力
クリエイティビティ:正解のない時代に自ら考えて解を見出す力
これまでの学校教育では、与えられた問題を解決する能力を重点的に学んできました。今までの社会には多くの問題が存在し、その問題を解決することで生活は豊かになってきました。しかし、物と情報は満たされ、飽和状態となりました。そして、問題は複雑化しています。このような時代に求められる能力は、課題を発見し、自分の考えを他者へわかりやすく伝え、そして、解を見出していく力なのです。これからの時代に必要な力への理解をアップデートし、実践する場を創出していかなければなりません。
おわりに
「失敗」とは、ネガティブなものであると考える人が多くいるのではないでしょうか。
それは違う。
「『失敗』とは、その時点の結果であり、その時点において、やり方が合わなかっただけである」と考える。
「挑戦」をしたから、「失敗」という結果を共有できるのである。常識が非常識となるVUCA 時代において、私は「対話」と「共感」を重要にしたい。価値観を相手に伝え、対話することで新たな答えを創造し、その過程で共感を得る。対話を通して、共感した人は誰から命令をされることなく、自立して行動を起こすことのできる人財となり、そういった人財の溢れる組織は、多様性に溢れ、率先して挑戦を行うことができると信じている。そして、「何をやるか」ではなく「何のためにやるか」を追い求めたい。やることを目的にしてはいけない。JC のためのJC をしてはいけない。JC は、地域により良い変化を起こす人財を育てる組織だ。本当に地域に必要とされることをメンバー全員で考え、自分ゴトとして「挑戦」しなければならない。
「挑戦」と「失敗」を繰り返し、人として大きく成長しよう。
2023年度理事長 松本 周