理事長所信

 

2022年度スローガン
無信不立(しんなくばたたず)
~地域とともに、新しい時代へ~

はじめに

 地域とともに、明るく豊かに、そして幸せに生きていくために、一番大切なものは何でしょうか?それは地域の人たちからの「信頼」です。
「無信不立(しんなくばたたず)」
 これは論語の一節であり、孔子は、政治を行う要諦として「兵(軍事、権力)」、「食(お金、経済)」、「信(人々からの信頼)」の3つを満たすことを挙げました。それを聞いた弟子が、「3つのうち1つだけ残すとすればどれか?」と尋ねたところ、迷わず「信を残す。」と答えました。「食」だと思っていた弟子はびっくりしましたが、「兵と食はもちろん必要だが、民衆からの信頼がなければ、どんないいモノでも意味が無くなる。信頼こそ根本である」と説いたのです。
地域で生きていくうえで、どんなに力が強くても、どんなにお金を持っていても、信頼がなければ、良い人生を送ることはできないということです。
 では、信頼とは一体何でしょうか?それは、「この人なら頼りになるな。」と、その人の「未来」を心から信じてくれることです。「好き」という気持ちと似たものかもしれません。
どのようにすれば信頼は築けるのでしょうか?それは、「思いを持って、正直に」、「地域のために、人のために」行動することです。地域の人はよく見ています。上辺だけ取り繕っても、すぐに見透かされてしまいます。しかし、これらの行動を続ければ、信頼の通じ合う「仲間(パートナー)」が生まれ、その信頼が連鎖していくことにより、ゆくゆくは地域からの信頼を築くことができます。そして、地域の未来もより良い方向に変えていくことができるのです。
 「失敗して信頼を失うのが怖い。」と行動を躊躇する人がいます。しかし、何もしなければ、変わることはありません。もし失敗し、一時は信頼を損ねても、それを見直す努力をし、自分自身が変われば、よく見てくれている分、十分に回復しますし、より良い信頼を得ることもできるのです。
 コロナ禍によって、時代の針は大きく進みました。特にデジタルの普及は、従来の「場所」や「距離」の制約を超え、会議や講演会はもちろん、仕事(テレワーク)もできるという、革命的な環境を生み出しました。また、過密な「都会」での生活から離れ、東讃地域のような「地方」と新たな関係を作り、ゆくゆくは仕事や生活の場を築きたいと希望する人々が大きく増加しています。
 いよいよ、「新しい時代」に向けた萌芽(ほうが)が見られるようになってきたのです。コロナ収束の切り札であるワクチン接種も始まり、2022年の後半には、行動制限の緩和も期待されます。新しい時代に向けて、東讃地域を変えていくチャンスが生まれています。
 面倒だ、そんな時間はないと感じる人もいると思いますが、まずはできることからチャレンジしていくことが重要です。2022年度、地域から信頼される人間として成長するために、果敢にチャレンジしていきましょう。

「足を運び」、「今を伝える」会員拡大運動

 青年会議所にとって、会員拡大は永遠のテーマです。なぜなら、メンバーは40歳になれば卒業するルールがあるからです。このルールによって、より多くのメンバーに成長の機会を提供し、時代の変化に合わせて、その運動・運営内容を変えていくことができています。卒業後、先輩の方々は、青年会議所で得た経験や人脈を生かし、地元企業や地域団体等の中核として活躍されています。
 急速な人口減少により、地域の担い手が不足している東讃地域において、多くの若者に青年会議所へ入会頂き、ともに運動頂くことは、地域の未来、そしてメンバーの未来に必ず繋がります。我々はこのことを、自信をもって発信する必要があります。
 その一方で、このルールによって、メンバーの入れ替わりや組織の変化が激しいため、どのような活動をしている団体なのか、地域の方々に十分理解されていない面があります。また、全国に691ある青年会議所ごとに規模や運動内容が大きく異なるため、イメージがつきにくいのも事実です。
 我々の運動を、どのように伝えていくか?ホームページやSNSにより発信することは当然ですが、最も大切なことは、現役メンバーが足を運び、現在の青年会議所がどのような運動を行っているか、そしてその魅力は何なのかを、1人ひとりに向き合いながら直接伝えることです。「今の青年会議所はどんな感じなのか?」互いにコミュニケーションを取り、信頼関係を築きながら、我々の活動・運動の場を見て頂く。この地道な取り組みを続けていくことが必要です。
 2022年度は、会員拡大こそが最大の青年会議所運動の発信と位置づけ、メンバー一丸となって新しい仲間を迎え入れていきましょう。

新入会員研修と、LОM一体感の向上

 青年会議所で得られる大きな学びの1つとして、事業構築があります。決めれられた時間のなかで、地域の課題を捉え、背景、目的、手法を検討して議案を準備し、理事会でプレゼンテーションし、意見に向き合いながらブラッシュアップしていく。この一連の過程は、近年重要となっている課題解決型の人材を育成するために、非常に効果があります。これによって得られるスキルは、自身の仕事や活動にも大いに生かせるものです。
 東かがわ青年会議所では、2020年度より、会員研修として、入会1年未満の新入会員に対して、事業構築について学んで頂く活動に取り組んできました。経験豊富なメンバーが指導者となり、模擬議案を実際の流れに沿って上程して頂くことで、事業構築の基礎を身につけていくシステムです。
 この2年間で、我々は研修活動を効果的に行うための大切な鍵を学びました。それは、個々が持つ様々な特徴を捉え、それぞれが研修に取り組みやすい環境を作り出し、コミュニケーションをとりながら信頼関係を築いていくということです。こうして生まれた信頼関係が、新入会員のスキルアップはもちろんのこと、青年会議所運動に対する意欲の向上にも繋がっています。
 研修を通じて、新入会員が気づくことはたくさんありますが、そのうち特に重要なのは、「事業構築と実施は、1人の力では成し遂げられない。」ということです。メンバーからの協力を得ることで、事業はより充実し、実りのあるものとなります。研修により身に付けたスキルを、実際に事業構築を行える段階まで昇華するためには、メンバー全体が、信頼し合う仲間となることが必要です。
 2022年度は、会員研修をより個々に寄り添い、効果的な研修が行えるようブラッシュアップさせるとともに、年度後半に、アカデミーメンバーが団結して、例会事業や家族会を企画する機会を設け、メンバーや家族との友情、そして新入会員を含めたLОM全体の一体感を高めていきます。
 新入会員の皆さんは、LОMの、そして地域の将来を作る「宝」です。年間通して取り組んでいきましょう。

「共感する心あふれる社会」の実現に向けたひとづくり

 日本は「生きづらい社会」と言われています。特に現代社会に生きる若者の課題として、バブル崩壊後の1990年代後半から論じられており、その背景としては、時代によって「学校でのいじめ」、「格差社会」、「非正規雇用」などの変遷が見られますが、近年では、他者に対しての「寛容さ」が課題として論じられるようになってきています。
 コロナ禍の不安と恐怖がまちを覆ったとき、何が起こったか思い出してみて下さい。私の知人の飲食店では、「県外の人間が来店している。今すぐ店を閉めろ」という嫌がらせの手紙や電話が殺到しました。ことさらに「正義」を振りかざし、欠点や失敗を過剰に批判する「不寛容」な圧力が、地域のなかに生まれたのです。圧力の対象となった人たちの悲しみや心の傷は計り知れません。
 コロナ禍は、地域に巣食う「不寛容」さを顕在化させたと言っていいでしょう。地域の不寛容な空気によって、まわりの人々も、自分が批判の対象とならないために、自由な発言や行動がしにくくなってしまい、ひいては「生きづらい社会」に拍車がかかってしまいます。
 その一方で、「不寛容」な空気のなかでも、飲食店の方々を励まし、応援を惜しまない人たちがいました。それは、「コロナ」という一つの側面だけでなく、様々な角度から彼らの置かれた状況を考えられる「仲間」たちでした。相手の気持ちや立場を心から理解できる、つまり「共感」できる仲間の存在が、飲食店の方々の大きな心の支えとなったのです。
 人が「不寛容」になる原因は、このような共感する力が足りない点にあります。批判をする前に、一歩立ち止まって様々な角度で相手の状況を考えてみれば、ことさらに批判し相手を傷つけることもなくなるでしょう。地域の人々が、自身のこれまでの生き方を見つめつつ、共感する心の大切さに気付き、その力が高まれば、「生きづらい社会」の解消に繋がります。
 「生きづらい社会」から「共感する心あふれる社会」へ。人の心を大切にできる地域にするためのひとづくりに取り組んでいきましょう。

「東讃に四国新幹線を!」住民の意識変革と賛同の発信

 東讃地域が「新しい時代」に向けて活性化するために、今我々が考えなければならない課題の1つに、四国新幹線の整備があります。
 四国の新幹線については、1973年に施行された「全国新幹線鉄道整備法」に、大阪~淡路島~徳島~高松~松山~豊予海峡~大分を結ぶルートと、岡山~高松~高知を結ぶルートの2つが「基本計画線」として盛り込まれていますが、本四架橋が優先され、長年塩漬けの状態となっていました。しかし、2017年、四国4県と経済団体が中心となって「四国新幹線整備促進期成会」が発足しました。現在の基本計画線のままでは一度に建設することは難しいことから、第一ステップとして岡山から瀬戸大橋経由で四国の4県庁所在地間を結ぶルートを整備し、第二ステップとして淡路島および豊予海峡部分を整備することを目指しています。第一ステップについては、東京・大阪間にリニアが開通する2037年に合わせて開業できるよう国に訴えています。これに呼応し、公益社団法人日本青年会議所 四国地区協議会が2017年に実施した署名活動では、四国の総人口の約3%にあたる、123,408筆が集まりました。
 東讃地域は、第一ステップの四国新幹線ルートに入っています。しかし、まだ整備に対して賛同する人が多いとは言えません。淡路島経由での整備のほうが京阪神・東京方面へ行くのが便利であるという地理的背景に加え、採算性や駅の設置、自治体の負担、並行在来線(JR高徳線)、ストロー現象などの問題が生じるとして、「こんな田舎には必要ない。」と考える人々も多いのが実情です。
 しかし、整備された地域でも見られるように、新幹線が経済・観光・市民生活に及ぼすインパクトには、きわめて大きなものがあります。第一ステップの整備であっても、東讃地域から京阪神へ1時間半、東京へ2時間半、四国の4県都全てに1時間以内でアクセス可能となり、従来のマイカーや飛行機での移動よりも便利になります。そして、都市間連絡機能を新幹線に譲ったJR高徳線を有効に活用すれば、日常の交通手段を新しい形に変えることができます。カーボンニュートラルを目指した社会の変化を見据えた時、マイカーをはじめとするエネルギー依存型の交通スタイルを変えられるかどうかが、地域の未来を大きく左右します。新幹線整備は、その大きな切り札となるのです。
東讃地域への四国新幹線整備を実現するためには、住民の意識を変革し、賛同の声を上げることが必要です。四国各地では、新幹線整備に関する講演会やシンポジウムが行われていますが、東讃地域ではまだ一度も行われておらず、地域独自の署名活動も行われていません。地域の未来を担う我々が、これらに率先して取り組むことには、大きな意義があると考えます。
 長年、香川県は「西高東低」と呼ばれ、東讃地域の交通網整備の遅れは、地域の発展に大きな影を落としてきました。こうした歴史を繰り返すべきではありません。四国新幹線整備促進期成会の皆様と連携して、「東讃地域に四国新幹線を!」の声を、地域の皆様とともに上げていきましょう。

東讃地域に「新しい人の交流」を生み出す「どんと恋」運動

 地域の未来を作るのは、カネでもモノでも、自然でもなく、根本は「人」です。それは、今地域内に住んでいる人だけではありません。未来に地域と関係を持つかもしれない、地域外の人も含まれます。内も外も関係なく、東讃地域を舞台に活動する人が増える、つまり「交流人口」、「関係人口」の拡大が、長期的な視点でみた地域活性化に繋がります。
東讃地域を語るとき、よく話に上がるのは「知られていない。」ということです。県内でも人口・経済規模が小さく、大きな観光地があるわけでもありません。しかし、中四国・京阪神からの高速道路でのアクセスの良さは良く、東讃地域に3時間以内でアクセスできる人口は1,000万人を越え、県内でも群を抜いています。人口減少によって増加を続ける空き地や空き家は、かえって新たな人々を呼び込む資源として生かせる可能性を秘めています。
 コロナ禍や東京オリンピックの開催を契機として、人々の生活や価値観は大きく変わりました。観光においてはアウトドア、スポーツにおいてはスケートボードなどのエクストリームスポーツが脚光を浴びています。また、キッチンカーやバンライフなど、これまでにないビジネス・生活様式も普及してきています。時代の変化をつかみ、東讃地域の強みを生かしつつ新たな人々を呼び込むことが、これからの交流人口・関係人口増加のためには重要です。そのためには、こうした時代の変化を東讃地域の人々に知って頂き、地域に潜在する力に気付いて頂くことが重要です。
 我々は、これまで東讃地域の「力」を発信すべく、過去11回にわたり、「どんと恋祭」を開催してきました。そのコンテンツとして、スケートボード文化を広める取り組みを行ってきましたが、担当頂いてきた団体のメンバー、堀米 雄斗さんが東京オリンピックで金メダルを獲得しました。我々の事業に参画頂いた方が世界一の栄冠に浴したことは光栄の至りです。「どんと恋祭」の持つ知名度、発信力、そして人や団体との繋がりを生かしながら、時代の流れをつかんだ、新しい「どんと恋」運動を構築し、東讃地域に新しい人の交流を生み出しましょう。

「命」を大切にする青少年の育成

 コロナ禍のなかで、時代の針は大きく進みました。しかし、新しい時代になっても、決して忘れてはならないものがあります。それは、「命」の大切さです。
 人間は、1人で生きることはできません。そのまわりにある「生きとし生けるもの」によって生かされています。それは地域の自然、そして地域で暮らす人々の営みのなかにあります。特に、純粋な心を持つ子どもたちにとって、これを実感することは大切なことですが、今日の社会環境のなかでは、その機会は少なくなっています。地域の若者として、地域の子どもたちのために、こうした機会を作ることは重要なことです。
 豊かな自然や、地域の人々と親しみ、楽しい体験を織り交ぜ、子どもたちに良い思い出を作って頂きながら、「生きとしいけるもの」によって生かされていることの実感を持って頂きます。
 子どもたちは、新しい地域を創るかけがえのない存在です。地域を作り出す根本にあるのは「命」です。このの大切さを伝えていきましょう。

さいごに

 私は東讃地域のさらに東端、東かがわ市旧引田町の生まれです。古い町並み地区のなかの、近所付き合いが濃く、「みんな知り合い、顔馴染み」の雰囲気の中で育ちました。プライバシーはほとんどありません。「そんな場所、生活しづらそう。」と感じる方も多いかもしれません。しかし、よくよく見ると、みなさん自由に、ほのぼのと、仲良く暮らしています。
 なぜでしょうか?
 それは、たとえ相容れないところがあったとしても、根本的には地域の「仲間」として信頼しているからです。また、何か失敗を起こしても、迷惑をかけても、「地域のために、人のために」思いを持って正直に行動している人には、あたたかい目をかけてくれるからです。
地域とは、根本的には「あたたかな」存在であると、私は信じます。行動して、時には叱られ、困難に直面しながらもやり切れば、最後には信頼が築かれ、明るく、豊かに、幸せに生きていくことができます。
東かがわ青年会議所が創立した1986年当時、東讃地域(現在のさぬき市・東かがわ市)には25,138人の若者(20歳~40歳)がいました。しかし、年々減少を続け、2020年には11,898名と、約60%減少しました。さらに2040年には7,530人にまで減少するとの推計も出ています。香川県内で、先行して人口減少が進んでいます。  
この数字をみたときに、「こんな状態の地域で生きていけるのだろうか。」と我々の将来が不安になってきます。このままでは、地域は消滅に向かっていくでしょう。しかし、逆に言えば、このような地域だからこそ、我々の生き方次第で、地域の未来を大きく変えることができる。その力を一人ひとりが秘めているのです。
我々の持つ力をフルに発揮するのは、今このときです。
 2022年度、仲間とともに一丸となって、地域とともに、新しい時代を築いていきましょう。

2022年度理事長  永峰 優一